読書 名取洋之助 『写真の読み方』 岩波新書

名取 洋之助 著 『写真の読み方』を読む。

”写真の読みかた”
写真の読みかた

Ⅰ 写真の読みかた
個人の芸術から集団の芸術へ
写真は何枚かを使うことによって、一枚の写真としての弱点を克服し、物語ることができます。現実の流れから切ってしまうことができます。現実の束縛から逃れることができます。それが、新しく写真が獲得した方法であり、場なのです。小説を読み時に、映画を見る時に、その内容を体験しているように感じるのと同様に、写真でも、現実との縁を切ることが可能なのです。何回も見ることができるもの、時間が経っても、たんなる記録以上の価値を持つものが、こうして、つくれるのです。

誰でも写真は読める
発明されてから120年以上たって、写真を記号として使いこなすことが、やっと始まったばかりです。まだ、小学生の作文ていどの内容しか書くことはできませんし、それも教科書どおりで、春は花が咲いてきれいです、といったものですが、それでも、素材を見せるのでなく、素材の処理の手際を見せることが始まっています。
したがって、私たちが写真を見る場合にも、新しい見方が要求されます。写真はいわば、見るものから、読むものへと変わりつつあります。何枚かの写真が並べられ、それらが語っている物語が問題となりつつある今日、一枚一枚の写真の技を鑑賞することは、能において能面だけを鑑賞するのと同様、まったく別な立場からものを見ることになってしまったのです。美術品としての能面と、演劇の一つである能というものの見かたが、はっきりわかれたのです。この段階になれば、もう写真のよしあしがわからないなどと、心配する必要はありません。誰でもが能面の彫刻としての芸術性を云々する必要はないのです。映画を見に行った時のように、また手紙を読むような気持ちで、写真をみればよいのです。

Ⅲ 二つの実例
1.組写真の基礎的技術
写真は写しただけで完成したものではありません。とくに、コミュニケーションの手段として写真を使う場合、写しただけの写真は、未完成品です。説明のつけかた一つで、写真は逆にも読める。何枚かの写真を組んでレイアウトすれば、強調したり、省略したりできる。いわゆる写真編集の段階で、撮影時の意図とはかかわりなく、話をつくり、印象を変えることができるからです。
その観点から写真を見た時、どんなことが技術的に可能であるか。

キャプションが読みかたをきめる
写真をどう読むか。そのいとぐちをつけるのがキャプション(写真説明)です。したがって、同じ写真も説明のつけかたで、いろいろに読めます。好意的、否定的な立場に立って説明をつけることができ、どちらの立場の説明も嘘ではありません。

並べられる写真で違う意味を生む
2枚並べると、写真は1枚のときと、違う意味をもってきます。共通の要素が強調され、違いは目立たなくなります。したがって、同じ写真でも、となりに並べる写真によって、まったく違った役割を果たします。写真の並べかたで、どんな印象に変わるか。並べる人に意志によって同じ写真がどんなに違う働きをするか。同じ写真のとなりに、一方では好意的な、他は否定的な印象を与える写真を選び、キャプションも、その意図を強調します。

レイアウトが話をつくる
まったく同じ写真を使っても、写真の大小、並べる順序によって、異なった話にすることが可能です。好意的な方は、キャプションは、すべて明るい面を強調し、情緒的なものを大きく扱います。一方、見方によってはプリミティブに見えるものは、なるべく小さくして目立たないようにします。
一方、否定的な方は、情緒的な写真は小さく、ドライな写真を大きくします。写真の切り方にも留意して、強調するよう、余分な空間を小さくします。

 

 

 

“読書 名取洋之助 『写真の読み方』 岩波新書” への1件の返信

  1. この本の情報は業務以外にも役立ちそうですね。
    出張のとき、カメラを持っていきますね。
    いい写真がとれたら、ブログに掲載してくださいね。

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